「Nanao pottery」七尾佳洋さん、うた子さん
北国街道木之本宿には、全国で活躍する陶芸家夫妻がいます。七尾佳洋さんとうた子さんです。
佳洋さんは函館市出身。
沖縄県立芸大で民藝を学び、卒業後、日本の「スリップウェア※」の第一人者・柴田雅章氏に弟子入り。兵庫県篠山市で3年間、薪ストーブなど生活で使う薪から出る灰で作る灰釉を掛けて焼成する師匠独自の技術を学びました。
(※土に水を加えたクリーム状の泥で模様を描き、釉薬をかけて焼く陶器のこと)
精巧な技術と経験に裏打ちされた佳洋さんの器は、自然そのものが持つ柔らかさと厳しさがそのまま同居したような美しい佇まいが特徴です。
うた子さんは、大阪府高槻市出身。
高校生の頃、器が好きな母と一緒に女性作家・石田陶春の展覧会へ行ったのを機に、在学中から石田氏の元へ落ち葉掃きに通い始め、卒業後内弟子に。「美しく暮らすことができなければ、美しい器はできない」という師の教えから、茶を立て、花を飾るなど「暮らしの美学」を学びながら、女性でも大物が作れる「紐造り」という技法を鍛錬しました。
プロでも扱うのは難しいと言われる北海道の赤土を使って作るうた子さんの器は、愚直な雄々しさと素朴な温もりが伝わります。
二人は師同士の交流を通じて出会い、佳洋さんの故郷北海道へ。
厚沢部町という山間の過疎の町にセルフビルドで作業場を建て、開窯しました。コンクールの入賞など実績を重ね販路が道外へと広がってきたことや、2児の成長など、生活スタイルの変化に合わせて、2015年に木之本へ移住しました。
住居兼作業場に併設するギャラリーでは音楽イベントなども企画し、2019年からは、陶芸教室も開講。今ではすっかり地域の寄り場になりました。
「器には生活の風合いが反映される」と佳洋さん。北海道にいた頃には、エゾヤマザクラやブナを使って作った釉薬も、こちらに移住後はカシなどを使って作るように。
うた子さんも「厳しい自然に向き合い作っていた頃と比べると、人々の営みが近くなり、器も営みにあったものになってきた」と言います。お二人がまちの人々と交わす暖かな営みの色がにじみ出た器を、ぜひご覧ください。
記事:堀江昌史(能美舎)
Nanao-potterry 長浜市木之本町1062 0749-56-1305