• 2015.3.1 長浜の人
  • 食と暮らし

さば寿司を買いに、小林商店へ


 「さば寿司のおいしい店があるらしいんよ」。もう5年ほど前のこと、余呉の知人に教えてもらい向かったのが、木之本町川合。岐阜方面に向かう国道303号を左に折れた集落です。当の知人も詳しい場所までは知らず、2人して、山々と高時川に沿うような細い集落をさんざんうろうろし、家々の間にひっそりとある食料品店にたどりつきました。ここが小林商店でした。

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それから何度となく通うようになったのですが、集落の入口に案内看板が設置され、迷うことはすっかりなくなりました。

 「昔はどの家でも自分とこで漬けて正月のご馳走やら冬の常備食にしたもんなんです。うちはその鯖を売る店やったんです」と小林商店の2代目・小林丈夫さんが教えてくれました。

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湖北地域で一般的に言う「鯖寿司」とはいわゆるバッテラや棒寿司ではなく、鯖のなれ寿司のこと。塩鯖を、炊いた米と塩で漬ける発酵食品です。
→こちらを参照
年々家庭で漬ける人は減る一方となり「ならばうちで漬けて販売しよう」と20年ほど前から小林商店製が登場するようになりました。

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お惣菜にお菓子、ちょっとした生活雑貨が並ぶ店内には重しをした桶が点々と並んでいます。

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小林商店のさば寿司は塩分控えめであっさり食べやすいのが特徴。千葉産の塩鯖に地元のお米を使ったもので、山椒がアクセント。気温を見ながら1ヶ月半ほどで取り出すそうです。現在製造を担当するのは息子の丈弘さん。

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丈夫さんは「もう重しが持てへん」と3年ほど前に引退しました。とは言っても移動販売車に食品を積み周りの集落に行商へ向かうなど店番は現役。大雪が降っても販売車を操る80歳です。

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15年ほど前に家業を継ぐまでは和食の料理人の道を歩んできた丈弘さんが、独自の改良を加えて今の味にいたります。「発酵したご飯の状態の見極めが大事ですね。気温が10度以上になるとご飯がどろどろになって鯖がすっぱくなってしまう。夏場はクーラーを付けて仕込んで、冷蔵庫で熟成させてと、温度管理には気を使います」。

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鯖以外の魚でも試行錯誤した結果、サンマのなれ寿司も登場するようになりました。

12月から2月にかけては正月、オコナイと需要が続くため、休みなしのフル稼働状態。口コミで噂が広まり今は全国各地から注文が来るそうです。丈弘さんは奥さんのご実家がある長浜市加田町にお住まいで、毎日小林商店まで通勤しています。休みがあったら何をしますかと尋ねると「山椒の掃除ですね」と笑います。

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創業130年。川合をはじめ一帯の集落はかつて林業が栄えた地域で、丈夫さんは「私らの子ども時分は高時川が物資の運搬に使われていて、上流の丹生の方から船でずーっと下って川合まで運んでたんです。うちはちょうど中継地点あたりで。その業者さんやらのお昼ご飯用におあげさんを揚げとくんです。それをおかずにして食べてはりました」。丈夫さんの話はよどみなく続きます。「今からじゃ想像もできんけど昔は川の水量が多かったんやなあ」。

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時代と共にいろんなことが変わってきました。良いことも悪いこともあります。丈弘さんのさば寿司を「おいしいなあ、上手に漬けるようになったなあ」とつぶやく丈夫さんの言葉に、小林商店のさば寿司の歴史は間違いのないものだと確信するのです。

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【小林商店】
住所_長浜市木之本町川合194-2
電話_0749-82-3558
営業時間_午前8時ごろ~午後7時ごろ営業 年中無休
さば寿司1本1460円、半分(切り身)730円 さんまなれ寿司480
電話やファックスなどでの注文も可能、夏期は生産量が少ないので要問合せ

矢島絢子
この記事を書いた人
矢島絢子
学生時代+数年を県外で過ごしUターン。冬の寒さをどうやって乗り切るかが毎年の課題。自転車に乗って肌寒さを感じなくなったときが湖北の本当の春到来だと信じています。そんな自転車の速度で感じるような、長浜の空気を伝えて行きます。