• 2014.12.19 長浜の人
  • 住まいと暮らし

地に足の着いた、農と暦という暮らし ー大澤祐介ー


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のどかな空気が流れ、昔ながらの古民家が立ち並ぶ中に「農と暦」はある。古民家のもつ雰囲気をそのまま残して改修されたお店で出迎えてくれるのは、店主の大澤さん。素敵な笑顔に柔らかい物腰と、芯の強さが印象的な青年です。

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■ライフスタイルを味わう
農と暦は、ヴィーガン料理と呼ばれる乳製品、蜂蜜等も含む動物性の食品を一切使用しない食事を提供しています。その季節の旬の食材や家の畑でとれた食材によって毎日変わるメニュー。大豆など植物性のタンパク質をメインにした食事は、お肉と比べても遜色ない深い味わいで、しっかりした満足感が得られます。ヴィーガンになってからは疲労も感じにくくなり体力も付いたという大澤さん。カフェというよりも大澤さん自身のライフスタイルがそこにはあります。

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■余呉生まれ
高校卒業まで余呉の土地で過ごした大澤さん。小さい頃から「手に職を持って、自分のやりたいことが出来る生活がしたい」と、漠然と将来のことを考えていました。田舎での生活が煩わしいだとか、そうしたマイナスの感情ではなく、都会のあこがれと興味のあったファッションや美容を学びたいと上京することに。しかし、人が多く緑の少ない都会の有り様に違和感を感じ、田舎の暮らしの良さがわかったという学生時代。フランスアンティークとの出会いがきっかけで、それに携われる仕事がしたいと考え、就職はせずにお金を溜めてフランスへと旅立ちました。

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■フランスでの出会い
パリを中心に、アンティークの仕入れも目的の一つだったというフランスの旅でしたが、東京と同様にパリの生活の酷さを見て、大澤さんの興味はヨーロッパの文化そのものに移っていきます。他の都市や田舎町を見て回る中で、古いものを大切にしながら営まれる生活の美しさに感化され、ひとが人間らしく暮らす方法を模索するきっかけになったといいます。「誰かが決めた価値観で生きるのではなく、自分の人生を自分の考えで歩き、人生を実験していきたいと考えるようになったんです。」帰国後は生活の源になる「食」づくりからはじめようと、祖母に教わりながら畑をしてみることに。大澤さんらしく生きるための生活が始まりました。

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■そして開店
「カフェをしたくて始めたのではなく、生活するために何が自分にできるだろうと考えたのが、畑とその畑で収穫できるものを使ったヴィーガン料理のカフェでした。」そんな生活の延長としてのスタイルと、長浜でも北端に位置するただの田舎町という場所性もあって、たくさんのひとが来ることは想定していなかったという大澤さん。予想とは反して、今では小さい子供をもったお母さん世代を中心に人気のお店になっています。祖父の家を父と改修したお店は、いくらでも長居できそうな時間が漂う独特の雰囲気。大きな田舎の家でお店として使われているのは家の半分くらいです。ゆくゆくは多くの方にゆっくりと余呉を感じてもらうためのゲストハウスに発展させていきたいと将来の展望をかたってくれました。

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■余呉での暮らし
田舎にはたくさんの土地が空き家や耕作放棄地となっているのに、都会にひとが集まっていることに疑問を感じてIターンを決めましたが、噂はすぐに広がる、自分を棚に上げ他人のことを批評するなど、田舎特有の人元関係をどうにかしたいと思うこともしばしばあるといいます。一方で、農作物の物々交換であったり、お金を介さないモノのやりとりに田舎暮らしの大きな魅力を感じるんだとか。余呉湖をはじめ豊かな自然環境に恵まれた余呉の地を、散歩や読書、週末はサイクリングなどで満喫している大澤さん。そんな余呉での暮らしの良さについては、自然を美しいと感じられる自分の心の有り様だと考えています。「余呉への移住者など、新しい風によって多様な交流の生まれる開かれた場所になっていってほしい。そのために、農と暦は収入を得るための場所としてだけでなく、田舎での情報発信の拠点にしたい。」地に足の着いた大澤さんらしい暮らしは始まったばかり。

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【農と暦】
住所:滋賀県長浜市余呉町中之郷1764
URL:https://www.facebook.com/pages/農と暦/231995510287594?fref=ts

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nagahamalabo