• 2017.12.25 長浜の人
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冬のごちそう、余呉のジビエをどうぞ!


シンプルに塩で味付けされた串焼き、炒めもの、さらには、味噌仕立ての一人鍋。
次々と登場する肉料理はどれもジューシーで、脂は甘く香る。
使われているのは鹿、猪、熊の肉。
野生の動物を食すときにつきまとうイメージ「かたい、くさい」は、まったく気にならない。

鹿の串焼き

猪の薄切り肉の塩こしょう炒め

猪肉の味噌炒め

味噌仕立て一人鍋(猪、熊それぞれあり)

 

これらは余呉の居酒屋金太郎で冬期に登場するメニューの一部。
高山康美さんが切り盛りするお店で、余呉の野菜や山菜など地元食材をふんだんに使っている。

 

11月から3月は狩猟が解禁され、野山の生き物を堪能できる貴重な時期だ。
金太郎で扱う鹿・猪・熊の肉は、近所の白川芳雄さんが余呉の山中で狩猟、解体、食肉へと加工したものを使っている。

 

「熊と猪がいちばんおいしいのは年内までに獲ったものやなあ。だからそれまでに獲って冷凍して保存しとくんやわ。肉そのものの味を見るなら、シンプルに塩と胡椒で焼いたもの。そやけど、バランスよく野菜と食べたいとなると鍋やわ。まあどれもおいしいで食べてみ」
と白川さんと高山さんが勧める。

 

白川さんのことは以前に「余呉のいのちと共に」の記事で紹介している。
米農家の傍ら、冬期は狩猟に精を出す。
猟師の免許をもってもう30年以上になるベテランであり、捕らえた獲物を広く提供したいと、湖北で唯一野生鳥獣の食肉加工場を作った人だ。

 

金太郎で食べる料理に「かたい、くさい」を感じないのは、理由がある。
仕留め方、解体処理の仕方、そして調理、どれにおいてもおいしく食べることのできる方法を用いているからだ。

「野生動物はな、獲る場所、獲り方、処理の仕方で、おいしさが断然変わってくるんや」と白川さんは教えてくれる。

――同じ滋賀県でも湖北と湖南では自然の植生が違うから肉質が違う、檻で獲るのと猟銃で仕留めるのでも変わってくるし、猟銃でも弾が当たった場所で変わる、速やかで適切な解体はもとより、殺菌消毒をほどこし、肉の余計な水分をとった上で、マイナス50度で素早く凍らせ保存する……。

冷凍庫から出したブロック肉

 

「猟師はな、ふつう解体の仕方を人に教えあうようなことはしない。だからみんな独自のやり方でさばいている。けれど間違った解体の知識をもってしまうとせっかくの肉がおいしくなくなってしまうことだってある。それではあかんとずっと勉強してきた」

食肉加工場「白川ファーム山肉亭」

 

長浜の中山間地での獣害は深刻だ。
鹿に関しては、生命力も繁殖力も強いため、固体の増加により山中の植生がボロボロになってしまっているとしばしば聞く。
里では農作物を荒らされるだけではなく、車の走行中にぶつかったり、また熊や猪なら襲わたりする事故が起きている。

 

こうしたなかで、猟師による駆除が進められていて、白川さんもその一人として山に入る。
白川さんがシーズンに捕らえるのは鹿50頭、猪20~30頭、熊が3頭程度だという。
どの命も無駄にしないことを信念としている。
「自分が仕留めたものを、自分の大事な人に食べてもらいたい。そしたら正しい知識ときちんとした施設で解体処理して、いちばんおいしい状態にしたいと思うのは当然のこと」

仲間たちと。基本は犬を連れて単独で狩猟する

 

 


 

金太郎は2015年にオープン。
高山さんのご主人が白川さんと旧知だった縁で、白川さんから鹿や猪、熊肉を仕入れ、店の冬の名物として登場させるようになった。

京都出身で、デパートガールでもあった高山さん。
包丁など握ったことがなかった。
「今となっては信じてもらえんかもしれんけど、お嫁に来たときはなじめなくて泣いてばかりやったやで」なんて言って笑う。

泣いてばっかりの日々はそのうち近所のおばあちゃんから、山菜採りの達人から、いろんな人からこの地の食材のこと、食べ方、保存の仕方を教わることに忙しくなって、それが楽しみと喜びになった。
金太郎のメニューは、高山さんが余呉で学んだ成果のようなものだ。

白川さんも高山さんの師匠になったひとり。
「鹿や猪、熊の肉ももちろん触ったことなんかなかった。芳雄ちゃんからおいしい食べ方、味付けの仕方をアドバイスしてもらって独自のレシピにしていったんよ。獲ってきたものを無駄にしたらあかんっていう思いを聞いているからこそ、おいしく食べてもらわんと」

 

そんな高山さんがお店まで開いたのは訳がある。

「電車に乗って長浜の市街地に飲みに行くやろ、けど終電があるから盛り上がってるときでも帰ってこなあかん。若い子からそういう話を聞いて余呉にも店がないとあかんってずっと思ってきたんです。居酒屋なら若い子もおじさんらも来て、年齢関係なくみんながわいわいと集えて交流できるはずやって。余呉のつながりの拠点をつくりたかった」

 

お店にお邪魔したときは、満席。近くの人も、山の方に住んでいる人も、広い余呉のいろんなところからお客さんが来ている。
声をかけるとなんでも気さくに教えてくれる。
「子どものときは、うさぎやら雀やら捕まえて食べてたよなあ」「そうやそうや、罠しかけてな」

 

 

鹿や猪、熊の肉のことは「ジビエ」と紹介されることがある。
狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語で、ヨーロッパの食文化に欠かせない存在だ。だからフランス料理店で食べる高級料理のようなイメージが強いが、日本の食文化のなかでも農村部の暮らしにおいては大きな役割を担ってきたはずだ。

「ハイカラなもんは出せへんのよ、田舎料理やで」
高山さんは謙遜するが、その土地のものをその地でおいしくいただく、これ以上のごちそうはないと思う。
余呉のジビエはその最たるものに間違いない。

 

 


金太郎
長浜市余呉町中之郷1153
0749-86-3227
営業時間 17:00~23:00
定休 水曜日
12月31日~1月3日は年末年始につき休み

白川ファーム山肉亭
長浜市余呉町中之郷1720
0749-86-3318

矢島絢子
この記事を書いた人
矢島絢子
学生時代+数年を県外で過ごしUターン。冬の寒さをどうやって乗り切るかが毎年の課題。自転車に乗って肌寒さを感じなくなったときが湖北の本当の春到来だと信じています。そんな自転車の速度で感じるような、長浜の空気を伝えて行きます。