• 2015.6.13

家から見える山のこと知っていますか? <茂森仙寿さんに聞く長浜の山>


はるか遠くにあって仰ぐ山は「さん」と呼び、人々の生活圏の一部となり暮らしの身近にあるいわゆる里山は「やま」と呼ぶことが多いと聞いたことがある。例えば「富士山」は「ふじさん」だ。また滋賀県最高峰「伊吹山」は長浜や米原の人は「いぶきやま」と呼ぶけれど、彦根市以南の人は「いぶきさん」と呼ぶ。

長浜の山々のほとんどは「◎◎やま」と呼ぶものばかり。どこにいてもすぐそばに山がある。しかし研究所でもそのすべてを網羅している者は少ない…。もっと詳しく知りたい!ということでお会いしたのが、加田今町にお住まいの茂森仙寿さん。登山愛好家グループ「虎姫山遊会」などに所属し、地元の山からアルプスまでを楽しむ暮らしを送っている。長浜の山についてのエピソードやおすすめの登山について伺った。

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山から自分の家を見る

 

長浜の山は決して高くない。1000mを超すものは伊吹山(長浜ではないけれど)を筆頭に、金糞岳、横山岳ぐらいだ。つまり、登山上級者ではなくても知識と装備を整えておけば体力的には過酷ではない。

「まずは自分の家から見える山に登ってみるのがいいですよ」と茂森さん。家から見える山でも実は登ったことがない、知らないという人は意外に多く、取材班もそう。「ふだん見上げている山から、自分の家や町内を望んで全体の様子や位置関係を確認してみる。山にぐっと親近感がわきますよ」。

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山に歴史あり

 

長浜の山々の魅力はなんといってもその歴史。

浅井長政の居城のあった小谷山、羽柴(豊臣)秀吉と柴田勝家の跡目争いの名前にも掲げられる賤ヶ岳、またその勝家の砦であった中尾山(玄蕃尾城)など、戦国時代の武将が陣地に、戦いの舞台に、居城にした山。

そして山岳仏教の聖地として修験者が修業にこもった己高山、天吉寺山…。

「己高山や天吉山を登れば、宿坊にした寺跡などが点々としています。どんな修行をしていたんやろう、と歴史に思いを馳せる楽しみがありますね」。山中のちょっとした勾配が実は要塞としての役割を果たしていたということだってある。

茂森さんいわく、「山は3度楽しめる」そうだ。まずどんな山かどのルートを行くかの事前リサーチの楽しみ、次に実際に登って体感する楽しみ、そして帰宅後撮影写真や行程を記録して残す楽しみ。事前リサーチに歴史学習を入れておくと単なる山がぐっと深くなることは間違いない。

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季節を愛でる

 

同じ山でも季節によってその表情がまったく違う。長浜の山に限ったことではないけれど、だからこそ、繰り返し登るのがおもしろい。

「新緑から夏にかけてはブナ林がいいですね。長浜なら山門水源の森、菅山寺などに多く見られます。山の冷たい風がさあっと通りぬけるときの爽快感。クーラーとは違う天然の冷気を浴びるのはたまりません」

山門水源の森は、日本のブナ分布の最南端地。菅山寺ともに今回の特集で取り上げている。

一方で冬といえば雪山。「自分の家の庭の木に降り積もる雪とは違う、雪化粧の美しさがあるんですよ」。茂森さんの山の師匠でもある虎姫在住の富永豊さんが著した「湖北の雪山50」(サンライズ出版)も参考になる。

茂森さんは色々と教えてくださいながらも「夏はこの山が良いとかそういった発想はあまりしませんね。誰かが決め付けるものではなく、登る人が感じて受けとめるもの。そその人次第です」

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低い山をあなどってはいけない

 

長浜に高い山はないと最初に書いたが、茂森さんは繰り返し「低い山を甘くみてはいけない」と注意してくださった。

「天気や時間、季節によって自分の感覚が狂ってしまうことは本当によくあることだし、よく知っているつもりの山でも迷うことはあります。常に最悪の場合を想定した準備を心がけてほしい。荷物は軽くしがちですが、非常用としてペットボトルを1本追加し、食料も多めに持つほうが良い」とのこと。

現代はGPSもあるけれど、機能が不全にならないとは限らない。地図とコンパスを読めるようにし、備えていくことも大切だと教えてもらった。

「ただ、地図ばかり見ながら山を登っても楽しくない。分岐点を事前にチェックしておくなどポイントで活用したらいいんですよ」

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横山縦走にチャレンジ

 

茂森さんと一緒に山登りがしたい!と企んでいた研究所。登山ビギナーを含む取材班の依頼に応じて提案してくださったのが、横山縦走。

横山は長浜市と米原市の間に南北に続く頂点が約300mの丘陵で、龍が寝そべっているような姿にちなみ臥龍山(がりゅうざん)の別名も。取材班の自宅からも見えていながら全貌を知らずにいた山だ。

「北端茶臼山古墳群に、織田信長の家臣であった秀吉が城番として守備した横山城など歴史的見所も豊富。名越町には森林公園散策コースが整備されています。米原市近江庁舎に近い日撫神社が南端になります」。

所要時間はゆっくり歩いて7時間程度。かなり長く感じてしまうが、「人家が近いし、万が一のことがあればどこからでも下山できますよ」とビギナーには安心要素も備わっている模様。

 

研究所ワークショップとして近日開催を企画中。詳しくはイベント告知をご覧ください!

 

 

竹村光雄
この記事を書いた人
竹村光雄
きれいな水と動植物にめぐまれた湖北の環境、町並みや集落の風景、そこに垣間見える生活に心を惹かれて移り住む。湖北には自分たちがぼんやりと「こうありたい」と願う未来の暮らし方や、そこにつながっていくヒントが沢山ありそう!それを見つけたい!そんな想いを抱きつつ、日夜地図を眺めては歩いて回って、見聞きしたり発見したりを楽しみながら、湖北の暮らしを楽しむ達人目指して目下修練中。