夏野菜の代表といえば、「なす」。
「なす」と聞けば思い出すのが・・・
「一富士二鷹三茄子 いちふじ、にたか、さんなすび」。
初夢にみると縁起がよいと言われているものたちだ。
初めてこのことばに触れたのは、子どもの頃。
富士山と鷹はなんとなく納得できたけれど、三番目がなぜ「なす」なんだろう???
大人になった今、そんな素朴な疑問を思いだしながら、湖北の伝統野菜「高月丸なす」を取材した。
「高月丸なす」は、
長浜市高月町井口(いのくち)地区で昔から栽培されてきた丸なすだ。
やや下ぶくれの卵型から、地元では「きんちゃくなす」とも呼ばれている。
長さは大きなもので8~10cm、直径は8cm、丸なすの中ではややこぶり。
一般の長なすに比べると、皮の紫色が濃いめ。
おりからの夕立を受けて、つやつやプリプリの皮の上で雨粒がキラキラと弾けていて、思わず「「うわーっ綺麗!」と叫んでしまった。
薄紫の花びらは、真夏の畑に一服の涼感を運んでくれる感じ。
「なすの花と親の意見は千にひとつも無駄がない、と言われるんですよ。」
そう教えてくださったのは、
「高月丸なす」の栽培を続けている「高月有機栽培グル―プ」の本田靖子さん。
「高月丸なす」は6月頃に種を植え、7月中旬から9月に収穫。
茶わんくらいの大きさが食べごろだ。
2番果は収穫せずにそのまま残し、畑で十分に熟させてから11月頃に種をとる。
この種を翌年まき、苗を育てて収穫、というサイクル。
取材に伺った日はちょうど、今年の初収穫。
本田さん、思わず笑みがこぼれます。
これが「高月丸なす」の種。
昔は、この種を絶やさないよう、お嫁に行くときは種を持参したそうで、
本田さんも物心ついた頃には、食卓に長なすではなくこの丸なすが並ぶのが普通だったとのこと。
よい種がとれないときは仲間で融通しあうこともあるそうだが、
年々作る人が減り、現在は井口でも10軒程度。
本田さんたちは、地元で受け継がれてきた伝統野菜を絶やさないように、と
この「高月丸なす」を栽培するほか、種を分けたり料理方法を紹介、
町内の小学校で郷土学習の一環として、苗を植えて栽培や収穫体験の指導もされているそうだ。
さて「高月丸なす」は、皮が薄く肉質がしまっているので、
皮ごと調理でき、加熱しても煮崩れしにくいのが特徴。
本田さんおススメの食べ方は、「焼きなす」。
1cmの輪切りにして、油を引いたフライパンで焼き、手作りの山椒味噌で食べるのが美味しいそうだ。
縦に4等分したあと5mm厚さに切り、薄く塩と重石をして3時間ほどおき、
布巾で水気を絞ったあと、溶き辛子・酢・砂糖・醤油であえる「辛子漬け」、
皮ごと漬ける「どぼ漬け」(糠漬け)なども美味しいのとこと。
収穫量が少ないため、一般の人の口にはなかなか入りにくい「高月丸なす」だが、
JA北びわこ高月直売所などに並ぶこともあるので、
見かけたら是非購入して独特の食感と味をためしてみてほしい。
[問] 高月有機栽培グループ・本田靖子さん 0749-85-4621
<取材後記>
「なすの花と親の意見は千にひとつも無駄がない」
大人になった今だからわかる「なす」の実力!
「一富士二鷹三茄子」にも納得です♪
執筆:ケイミー