木本町の古橋。
己高山麓の集落は、高低差のある地形に寄り添うように田畑や家屋が所狭しと立ち並んでいます。
古橋ならではの涼といえばこの水路。
集落の中心を流れる大谷川の澄んだ山水が路地から路地へと引き込まれ、
全数およそ120軒のうちほぼ全ての家々に行き届いています。
上水道が普及するほんの数十年前までは日常の飲料水として、
現在でもイケス、洗い場、あるいはやかんのお茶や果物を冷やしたりと、
暮らしの一部になくてはならないものとして重宝されています。
そしてまた、きれいな水辺にはたくさんの生き物が棲みついています。
水路の石積みは緑に覆われ、小魚や沢ガニ、それを食べるナマズ、そしてなんとここにはオオサンショウウオまで、棲んでいるのです。
人里離れた山奥ではなく、ごくごく稀に、朝起きたら家のカバタでオオサンショウウオにばったり会うなんてことが、本当にあるといいます。
いろんな生き物たちが棲みついているすぐそばに自分たちの暮らしがある。
これはきっと未来の暮らしのお手本になるんじゃないか、と思います。
古橋では路地裏から家の中まで、どこにいてもサラサラとした水の流れる音が聞こえてきました。
何百年も以前の優れた土木技術と、それを大切にこれからも継がれてゆく暮らしのロマンに想いを馳せながら、
美しい里山の風景を見つけに行くのはいかがでしょう。
執筆:竹村光雄