• 2018.10.4
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観光客の満足度を高めるために動く長浜人


長浜城歴史博物館友の会の副会長・長浜観光ボランタリーガイド協会理事 

沓水達雄さん

 

年間200万人の観光客が訪れる長浜市。その観光客をもてなすボランティアガイドを紹介します。

 

定年退職後のセカンド・ライフ

沓水(くつみず)達雄さんは、自宅、小学校、中学校、高校、職場が一つの円に納まると話す、長浜生まれ、長浜育ちの生粋の長浜人です。地元の企業を60才で定年退職後、観光ボランティアガイドとして活躍しています。

現在は、長浜城歴史博物館友の会の副会長であり、また長浜観光ボランタリーガイド協会の理事として、長浜市の観光産業の発展に貢献されています。

 

関わりのきっかけは、長浜城に縁の深い山内一豊を主人公としたNHK大河ドラマ「功名が辻」が2006年に放映された際に、地元の観光協会が主催したツアーに参加したことが、発端とのこと。

このツアーで長浜市内の姉川や木之本周辺を巡り、歴史に名を残すような数々の出来事が身近な場所で起こっていたことを知り、当地の歴史に強く感心を持つように。このツアーで知り合った長浜城歴史博物館友の会の会員に誘われてのことでした。

入会後は、友の会内の「一門衆(いちもんしゅう)」、さらに「黄母衣衆(きほろしゅう)」の一員に。
それぞれ古めかしいネーミングの集団ですが、いずれも長浜城歴史博物館をボランティア活動で支援するサポーターグループです。

さらにその後、長浜観光ボランタリーガイド協会が主催する講習会に参加(10回、半年間)し、4年前に当協会に入会。

「一門衆や黄母衣衆のメンバーは、同協会の会員でもある人がほとんどで、その先輩方と同様な流れで活動しています」と沓水さん。

 

長浜城からの展望がおすすめ、と沓水さん

 

長浜城歴史博物館友の会について

長浜駅の西側の湖畔に堂々と立つ長浜城は、市制40周年を迎えた昭和58年4月に歴史博物館として開館しました。
その事業資金の約半分(4億3千万円)は、京都の資産家や市民からの寄付によるものでした。
開館後、記念行事「長浜出世まつり」が行われましたが、これが後のまちづくり、地域づくりのきっかけとなっています。

昭和60年に、「歴史に根ざした地域づくり」をめざして、博物館の活動を支援しながら、地域文化の発展に寄与するとともに、会員相互の交流を図ることを目的として、「友の会」が誕生したのです。

会では、年10回程度の講演会や、年数回の「臨地見学会」「歴史探究ハイク」を開催、一般の方々も多く参加し、歴史や文化についてより深く学ぶ場となっています。

今年度は、北近江歴史大学と称し、1回目に豊臣秀吉の家臣「加藤清正」の講座を開催。

「2回目は『福島正則』の講座でしたが、広島県からお迎えする講師が7月豪雨のため来訪できず、延期となりました。急な中止だったため、講演会への来場者への対応に追われていました。直近の歴史探究ハイクでは『鉄道と港のまち』敦賀を訪ね、明治ロマンあふれる歴史を体感。大変評判の良い企画になりました」と振り返ります。

 

敦賀まち歩きの参加者を見守る沓水さん(左端)

 

現在、会員数は約600名。
高齢化が進み会員数は減少傾向にありますが、それでも、友の会だよりの発送や博物館外回りの清掃などのボランティア活動に取り組んでいます。

 

毎月17日朝に行われる清掃ボランティア

 

長浜城一門衆および黄母衣衆とは

長浜城ならではのユニークなネーミングですが、いずれも友の会有志によるサポーター集団です。
豊臣秀吉の家臣団を表す「一門衆」は、来場者への展示説明などを行うグループとして、平成18年に結成。
現在も30人ほどが、午前・午後それぞれ2時間ずつ交代で、手作りの桐紋入り陣羽織風衣装を着て、博物館の展示の案内を担います。
「湖北の歴史やまち案内ならお任せという勉強熱心な方々で、観光ボランティアガイドとして活躍している人も多いんですよ」と教えてもらいました。

博物館を訪れるのは、観光で立ち寄った人もいれば、展示に興味を持って来た人もいるなど、その目的はさまざま。
「よって、声をかけて説明して喜んでもらえるのかどうか、迷うこともしばしばですが、最後に感謝の言葉を頂くと満足感に浸れます」

また、秀吉の馬の親衛隊名を使った「黄母衣衆」は、平成21年に発足。
15人のメンバーが、友の会の講座の受付や見学会の企画、運営などについて、博物館事務方を手伝います。
「現状、メンバーは70才以上が多く高齢化が進んでおり、これらの活動を継続させていくには、新しいメンバーの加入が欠かせません。機会があれば、あらゆる人々を勧誘しています」
と、今後の会の後継への思いをもらします。

 

長浜観光ボランタリーガイド協会について

長浜を訪れる観光客に、湖北の自然風土や歴史文化、地場産業について会員自身の奉仕活動により案内と説明を行い、長浜についての理解を深めてもらうことを目的として1984年4月に設立された団体です。

博物館に学芸員がいるように、会員もマチを熟知し、真心こめてガイドを行っています。研修にも力を入れ、会員の満足度向上にも努めています。
活動の拠点は、築300年以上の町家をリフォームして利用した「湖北観光情報センター 四居家(よついけ)」にあり、現在、54名が活動中です。

 

活動拠点の町家に入る沓水さん

 

ガイド業務の一つとして、午前中、長浜駅改札口にて待ち受け、希望される観光客をまち歩き案内することがあります。
案内コースは、長浜城~慶雲館~鉄道スクエア~安藤家~黒壁スクエア~曳山博物館~大通寺。約90分かけて巡ります。

「長浜に来られてどこを見学したら良いか迷われている方もおられ、その様な方が参加して下さることも多く、『ガイドして頂いて無駄なく回れた』『ガイドさんの温かい話し方に触れられてよかった』と喜んで頂いています。長浜初心者に是非参加していただきたいコースです」と、沓水さんは胸をはります。

 

長浜駅改札口前で待ち受けるガイドメンバー

 

改札を出てきた観光客らにガイドの呼びかけ

 

実は、長浜市には二つのガイド団体があります。長浜観光ボランタリーガイド協会は、長浜駅の南方面、田村駅周辺までと、長浜駅の北方面、虎姫駅、河毛駅周辺までぐらいがガイドの範囲。

そして、河毛駅からの北部は、奥びわ湖観光ボランティアガイド協会が担当しています。
「両方の団体に所属して活躍する方もおられます。どちらの団体もそれぞれ特徴のある活動で頑張っているので、共に発展して行ければと思っています。その中で、高齢化に伴う会員の減少には、積極的な対応策を考えていかなければなりません」

友の会と同様にメンバーの高齢化が課題になっています。

 

シニアの居場所に集まれ

「紹介した団体が、私の居場所」と語る沓水さん。定年退職後の余暇時間で地元のことを勉強し、学んだことを生かして、ボランティアガイドとして活動することで、充実感を得る。これが一つのシニアの生き方ではないでしょうか。

勉強は日々脳細胞を刺激し、歩くことは健康維持に役立ちます。ボランティア活動に集まる皆さんがそれを実証しています。「情報発信力のある長浜市で私たちと共に活動しませんか」「シニアの居場所でお待ちしています」と力強くメッセージをいただきました。

田中創
この記事を書いた人
田中創
定年退職後、地方暮らしに憧れ、東京から移住。 東京有楽町にあるNPOふるさと回帰センターで「ほどほどの田舎」「ほどほどの都会」をPRする滋賀県を知り、自然と歴史・文化が共存する長浜市を永住の地とする。自称「ふるさと回帰サポート」として、びわこ長浜の情報を発信している。