• 2017.12.5
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琵琶湖でととのう テントサウナパーティー


11月末日。湖北町尾上の湖岸。
晴れと曇りが入り混じった空に北風は、晩秋の湖北地域によく見られる天気模様だ。
琵琶湖を囲むようにある山々の紅葉が照らし出されている。この彩りも今年はもう見納めになろうとしている。

 

そんな風景に囲まれたテントから、突如水着姿の人が飛び出し、琵琶湖へ飛び込んでいく。

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改めて書くが、11月末である。
冷たい風も吹いている。

湖岸道路を通過する車から、「何ごと!?」という視線が伝わってくる。

 

 

実はこのテント、薪ストーブが設置されていて、中で行うのはサウナなのだ。

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サウナを経験した人ならご存知であろうが、なくてはならないのが、水風呂。
サウナの熱気・蒸気と冷水を浴びるのを交互に繰り返すことで、副交感神経を高める効能がある。
この水風呂の役目を果たしてくれるのが、琵琶湖という訳なのだ。

 

 

 

テントでサウナの訳

「いわば移動式サウナですね。山でも川でも湖でも、テントを設置できる場所ならどこででもできます」
テントサウナパーティ」と名付けたイベントとして、2016年から全国各地でテントサウナを行っているのが、藤山誠さんと林由利子さん、吉田直裕さんの3人だ。
まだ日本ではなじみのうすいテントサウナを広げたいとの思いをもつ。

林さん(左)と藤山さん。この回では吉田さんはお休みだった

林さん(左)と藤山さん。この回では吉田さんはお休みだった

 

 

3人は大阪にあるウェブ制作会社「TAM」のスタッフで、日々はデザインなどの業務に関わっている。
この3人の共通点が、サウナを愛好しているということ。
サウナにはまり込むうちに、本場フィンランドのサウナスタイルへの憧れを高めていったのだという。

フィンランドの人々にとって、サウナは暮らしの一部。
家にも外でもサウナに入る。大きな特徴ともいえるのが、サウナが自然と一体化しているところだ。
湖があればそのそばにはサウナコテージがあって、湖に飛び込む。冬は凍った海に穴を開けてそこに飛び込む。

 

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フェルト製のサウナハット。サウナ内で過ごすとき、頭部への熱の刺激を和らげてくれる。スナフキンがかぶっている、あれだ

 

日本にもスーパー銭湯などの温浴施設にサウナはある。けれどフィンランドのように「自然のそばでサウナを満喫したい」との思いがメンバーに募っていったのだという。
自ら施設を作るという方法もあるが、それには莫大な資金がかかる。

そこで見つけたのがテントサウナという道具。すぐさまフィンランドの製造元へ注文したそうだ。
「日本に到着するまでどれだけ時間かかるかと思ってたら、3日で届いて拍子抜けました」と藤山さんは笑う。

こうして「テントサウナパーティ」が始動した。

 

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防火等に適した特殊な生地が使われたテント。定員6人

 

 

ストーブは随時薪がくべられ、テント内はおよそ70度を保つ。
ストーブの上の石は香花石といって、フィンランドの溶岩石で、これが熱さを維持してくれる。
湿度が低いからか、いてもたってもいられない暑さというわけではない。
ベンチに並んで座っておしゃべりしながら過ごす。

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ここに登場するのがヴィヒタという木の枝の束。白樺の若枝で、水に浸けてある。

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北海道から取り寄せている白樺の枝

 

 

この白樺を石にバサバサと当てると、蒸気が充満して、一気に体感温度が120度くらいにまで増す。
これでぶわっと汗が噴き出し、う!暑いという状態になってくる。
さらにヴィヒタで、頭や身体をバシバシと叩いてもらう。
白樺の香りに包まれつつ、血液循環や発汗作用を促す本場の作法なのだ。

 

 

一連の作法を何度か繰り返すなかで、自分の限界を感じたら外に出て琵琶湖へ飛び込む。
湖水に浸かっている時間も好み。晩秋の琵琶湖の水温は10~15度の間だろうか。一気に身体が冷やされるので、ざぶんと浸かる程度で戻ってくる。

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テントサウナパーティーの開催は基本的には真夏をのぞいた期間。メンバーは会社員ゆえ、週末がもっぱらだ。
自分たちが楽しいからやっている、その延長に人々がやってきて一緒に楽しんでいく、のスタンスで続けているが、噂を聞きつけ方々から依頼も来るようになった。
そんななかででも、「メインの拠点は琵琶湖」なのだという。
これまでは琵琶湖の西側での開催ばかりだったのだが、縁あって今秋、尾上でも開き、この取材はその第2弾のときのものだ。

 

 

 

琵琶湖でととのう

「圧倒的な存在感、豊さが琵琶湖にはあって、水風呂として使えるなんてすごい財産だなあと。今年初めて湖北で開催して、琵琶湖へ沈む夕日のすばらしさを知りました。これを眺めながらテントサウナができるのはここだけの魅力ですね」

熱い、冷たいの繰り返しのなかに、心と身体を落ち着けるクールダウンともいえる時間を設けて、それを「ととのう」と表現する。
「目を閉じて風を感じていると、自然と自分が一体となっていくような……。『整う』と『調う』のどちらの意味をも含んでいるんですよ」

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ととのう、の境地はたぶん座禅とか瞑想に近いものがあるのだろう。
だからだろうか、ほうっと息をついたときに見渡す風景は、もう何十回、何百回と見てきているのに、ものすごく新鮮に映る。

 

 

こんな琵琶湖の楽しみ方

今これを記している私にとって、長浜の冬は何年暮らそうが苦手だ。
冬の琵琶湖に近寄ろうと思ったことすらない。
けれど、身体がポカポカとして、心身共にデトックス効果だって得られるための寒さなら、気分が盛り上がる。
ずっと親しみをもって琵琶湖へ近づいていける。

「この間は自転車のイベントに呼ばれて、バイクtoサウナをしました。ほかにもハイクなど、テントサウナは他のアクティビティといろいろ組わせていけるんですよ。
サウナを通じていろんな人とつながっていけるのも楽しみになっています」
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琵琶湖はもちろん、水辺のくらしがそばにある湖北は、土地そのものがテントサウナと相性がいいはずだ。
スノートレッキング、カヤック、いろんな組み合わせの可能性が浮かぶ。
実は、市の北端にある西浅井町は、フィンランドのトフマヤルビ町と友好都市提携していたなんてエピソードあるのだが、それはまた別の機会に。
サウナが好き、琵琶湖が好き、自然が好きな人にはもちろん、
寒さに参ってる、日々に追われているなんて人にもぜひ体験してみてほしい。
違った風景と琵琶湖が見えてくる。
そして気持ちも一新されるはずだ。

 


12月9~10日 尾上湖岸 テントサウナパーティ

 

矢島絢子
この記事を書いた人
矢島絢子
学生時代+数年を県外で過ごしUターン。冬の寒さをどうやって乗り切るかが毎年の課題。自転車に乗って肌寒さを感じなくなったときが湖北の本当の春到来だと信じています。そんな自転車の速度で感じるような、長浜の空気を伝えて行きます。