• 2016.11.11 長浜の人
  • 歴史と暮らし

秘仏を守り伝える“世界一小さな博物館”の館長さん


国道8号線沿いの集落、長浜市高月町宇根(うね)。この集落にある冷水寺の観音様には、秘密がある。

お堂に鎮座する十一面観音像は、「鞘仏(さやぼとけ)」と呼ばれ、その胎内には秘仏がおさめられている。

「鞘仏(さやぼとけ)」

「鞘仏(さやぼとけ)」

 

秘仏は、もともとの本尊だった観音様で、天正11年(1583)の賤ケ岳の合戦で豊臣秀吉と敵対した柴田勝家によって焼き討ちに遭い、焼け傷んでしまう。

「焼き討ちにより痛ましいお姿になられた観音様」

「焼き討ちにより痛ましいお姿になられた観音様」

 

その痛ましい姿を地域の人々が鞘仏に納めたのが元禄15年(1702年)のこと。以後今日まで地域の人々によって守られてきた。

秘仏が鞘仏の内部に納められている様子

秘仏が鞘仏の内部に納められている様子

 

 

「観音様と地域の歴史を、地域に広め、未来に伝えたい」

そんな思いを込めた「冷水寺胎内仏(たいないぶつ)資料館」が、冷水寺の隣にある。平成10年宇根自治会が手作りで建てたわずか8畳ほどの大きさの「世界一小さな博物館」だ。

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宇根住民で建設業を営む下村正勝さん(73)は、資料館の設計から建築の際の棟梁を担い、開館後は館長を務める。

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「焼け焦げた観音様を、鞘仏を作ってまで、守り、伝えたいと願った、この地域の人々のやさしさを伝えたいんです」。そう話す下村さんは、この地を訪れる人たちへの案内など率先して様々な取り組みを行う。

長浜市高月・木之本地域各集落で守られている観音様を一斉に拝観することができる毎年恒例のイベント「観音の里ふるさとまつり」でも、冷水寺胎内仏資料館は参拝客でにぎわう人気のスポットとなっている。

人気の秘密のひとつは、軽妙ながら熱い思いが伝わってくる下村さんの解説にある。博物館に設置された来訪記録帳やインターネット上で、先人たちのやさしさとともに、下村さんが評判となっている。「館長さんに会いに来た」なんていう人もいるほどだ。

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館長を務めるようになってから18年、下村さんは、毎月欠かさず地域の人たちへ広報誌「冷水寺胎内仏資料館NEWS」を発行している。2016年11月で233号を数えた。

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「毎月、無事に発行できることに感謝しています。少しでも多くの人に見てもらえれば嬉しいし、地域の人にも観音様に愛着を持ってもらいたい」

伝えることの大切さ、その難しさ…。下村館長だからこそ続いているのだろう。

 


毎月18日は、観音様に「おぼくさん」を供える日。宇根ではこの習わしが受け継がれており、当番がお供えをしている。

「おぼくさん」

「おぼくさん」

 

当番の順番や、記録をつけておくための台帳も、大正元年からしたため続けられている。

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焼き討ちにあった観音様を、鞘仏とやさしさで守る人々の暮らし。
「この地の人々のやさしさを未来へ伝えたい」

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冷水寺胎内仏資料館
〒529-0251 滋賀県長浜市高月町宇根308-1
電話 0749-85-3209(下村さん)
開館 年中昼夜無休(※センサー式の自動アナウンスあり)
料金 無料
アクセス
JR北陸本線「高月駅」下車 車5分
車 木之本インターから15分
駐車場 普通車2台

ウェブアドレス http://www.biwa.ne.jp/~kazan-28/tainaibutu.html

高月にぎやかし隊
この記事を書いた人
高月にぎやかし隊
高月が大好き! 市内の20〜30代のメンバーで活動している、まちづくりボランティア団体です。仕事や家庭をもち毎日がバタバタと過ぎていきますが、やはり自分の住む地域を明るく楽しくしていきたい。少しずつ時間を見つけて活動しています。