遠く、琵琶湖を見下ろす高台の住宅地に、突如現れるおせんべい屋さん。
店内の壁にはずらりと焼き型が並び、年代物の製造機を水口隆さんが巧みに操ります。
一般に玉子せんべいと言われる朝採れ卵と小麦粉・砂糖を主原料にしたせんべいの製造がメイン。手間暇のかかる昔ながらの手ごね製法で練り上げ焼いた、 素朴さとやさしさを今に伝わる味わいです。
焼き機や道具類は古さゆえに扱いが難しく、細か な調整と勘があってこそ。
それでも「1枚1枚に個性が出る手焼きの良さ」を大切にします。
看板商品の「豆蔵」は、ぎっしりつまったフライビーンズの塩気と生地の甘さの相性が絶妙です。
地元の醤油蔵の味噌を使ったみ そせんべい。さくさくした食感でこちらもやみつきになりそうです。昔ながらのせんべい屋さんが次々に 廃業していくなか、ぜひ使ってほしいと譲り受けた焼型を活用しています。
隆さんはもとはサラリーマンで転勤族。妻の純子さんと、すみかに選んだのがアクセスと環境の良い長浜でした。その後、高齢になった父の跡を継ぐことを決め、京都で約100年営んで いた店を、気に入っていたこの地に移しました。
毎朝、住宅街に漂うせんべいの焼ける香 ばしい香り。今ではすっかり地域の風物詩です。
記事:矢島絢子 写真:川瀬智久
【豆蔵、みそっこなど】
水口製菓所 長浜市法楽寺町37-5 0749-74-4117 8時半~17時半 不定休