長浜の郷土料理に鯖(さば)を使った料理が色濃く残っています。琵琶湖は淡水なのになぜ海水の鯖が?と思うでしょうが、その昔、「鯖街道」と呼ばれた日本海でとれた鯖を小浜からびわ湖西岸を通り京都へ運ぶ道があります。長浜へも鯖街道の支流が延び、敦賀・木之本の「北国街道」を通り、長浜へも鯖が運ばれました。
鯖は鮮度落ちが早いため、海から引き上げられるとすぐに濃い塩で〆られ、道中ほどよい塩加減で長浜にやってきたと聞きます。
長浜で残っている代表的な鯖料理としては、「鯖の早なれ寿司」。冬の厳しい湖北地方で、雪に閉ざされた冬を乗り切るための保存食として、またお正月やオコナイ(ハレの日)などの行事食として受け継がれて来ました。
姉川から北の北国街道沿いに残る伝統食で、米所である長浜の豊富な米と脂ののった秋鯖を使い漬け込みます。脂ののった鯖は腐敗しやすいので、殺菌のために酢や塩、そして漬けるご飯にも山椒やしょうがを加えます。添加物ではなく自然にあるものを使うところは、先人の生活の知恵から来るものです。
漬け込んだ鯖寿司は、30日くらいで食べ頃になるので、正月に合わせて11月頃から漬けはじめる家庭が多く見受けられます。
また、街道の往来が活発なところでは、焼き鯖そうめんがあります。焼鯖と素麺は、昔から大変貴重な品で先祖等にお供えする供物でした。その供物を用いて、春祭りやハレの日に食べる風習が根づいたのです。また農繁期の5月に、農家に嫁いだ娘を気づかい、農作業が忙しいときの家事を心配する親元が焼きさばを届ける「五月見舞い」と呼ばれる風習があります。その焼鯖とそうめんを炊き合わせ手軽に食べられることから農繁期の定番の郷土料理になりました。さらに、手軽に食べられてきたのは、焼きたての鯖を甘酢に浸けながら食べる方法で、これは各家庭で一番よく食べられてきた方法です。
■鯖の早なれ寿司レシピ
漬ける時期は11月下旬~2月上旬の寒い時期とすること。
それ以外の時期に漬けると腐敗し食中毒になるおそれがあります。
塩鯖 8匹
普通に炊いたご飯 米2升分
塩90g
山椒の実1/2カップまたは生姜の千切り2袋分(殺菌作用がある)
糀少々 1/2カップ(発酵を促すため)
酢(手水用) 米酢900cc
• 塩鯖のえらと背びれをはさみで切り落とし、目玉を取る。背骨を取り、水洗いしてペーパータオルで水分を取る。
• 米は普通に炊き、おにぎり程度の塩を振り混ぜる。
• 人肌になったご飯に、糀と山椒の実または生姜をまぜよく冷ます。
• 冷めたご飯を鯖の腹の中に詰め、頭の中にも少し詰める。
• 30Lの桶に漬物袋2枚のビニールを被せる。
• 桶の下に3cm程度ご飯を詰め、その上に鯖を同じ方向に並べ、一重ごとにご飯を薄く置く。一番上の段は少し多めのご飯を置くとよい。そのときの手水は酢または清酒とすること。(水は腐敗のもととなるので使わないこと)
• 上に竹の皮(なければラップ)を乗せ、桶の縁に三つ編みにしたワラ(ビニール紐を三つ編みにしたものでもよい)を乗せ、押しぶたをして中身と同量くらいの重石を乗せる。
• 2日くらいで水が上がってきたら、重石を倍の重量にする。
• 桶を置く場所は、日の当たらない風通し涼しい場所がよい。
• 30日ほど漬け込んだら出来あがり。
執筆:川瀬