御坊さんの表参道から大手門通りに曲がるとすぐ左手に格式ある佇まいの本屋さんがあります。
立派な店構えの入り口をくぐると、
古時計と綺麗な奥様が出迎えてくれます。
長浜や滋賀にまつわる書籍やレトロなぬりえが立ち並んでます。
店内を見渡すと通りに面して大きな座敷とその奥には立派な中庭が。
座敷からのすぐ脇には、樹齢400年と言われる梅の老木があります。
現在も早春になると健気に花を咲かせるそうです。
この本屋さんは子供の頃からお世話になっており、初めて購入は学校の教科書で。
3月になると座敷いっぱいに教科書が並び、一気にお店が慌ただしくなります。
今は、自宅や事務所の書籍購入でお世話になってます。
旧長浜市内であれば配達してくれる、ありがたい本屋さんです。
この本屋さんのもう一つの慌ただしい時期が「長浜曳山祭り」の開催時期。
出番山の年は当たり前ですが、店先に桟敷席があり曳山狂言の見物や山組関係者の休憩の席となっていたそうです。
祭りの時期になると、ここが桟敷席に。
組み立て式になってるそうです。
奥様と雑談まじりに「お気に入りのお店紹介の取材で!」と話してると、
奥から社長と若旦那が登場。
文泉堂のルーツを聞かせてもらいました。
江戸期の商家を守り続けておられ、元は「銭作」という屋号の両替商で明治から新聞販売等を経て現在の本屋になったそうです。
その名残でお店のロゴが和同開珎の丸と四角をモチーフにした形になっているそう。
こうやって改めてお話しを聞くと大変興味深い、面白い話がたくさん聞くことができました。
膨大なストーリーがあるので少しかいつまんでご紹介を。
勝海舟の書。
落款をみると吉田氏の為と書かれている為書が。
新聞販売時代の箱。
残念ながら今は夏場で片付けられてるんですが、岸駒(狩野派絵師)の襖絵が座敷に。
実は中庭の梅の古木がモデルになったと言い伝えられているそう。
八枚の襖でL型に配置しコーナー部分に梅の古木が描かれています。
襖を閉じた状態も見てみたいですね。
この写真は、大通寺にある岸駒作の襖絵「老梅図襖」(重要文化財)。
上の座敷にある襖と似てませんか?
岸駒が文泉堂に逗留しこの作品を仕上げたと伝わっており、中庭の梅の木がモデルになり座敷の襖に下絵として描いたのではないか?と推測されます。
これは社長が事務局を務め、1993年に初版発行された昭和30年代の情景が思い浮かぶ「わたしの長浜」。
長浜市出身の画家 佐々木洋一氏 の若き日にスケッチした長浜の街並みの画文集。
長浜市の回顧録で郷愁をかき立てるものがあり、思わず見入ってしまいました。
地元ゆかりの本を探すも良し、欲しい本を配達まで待ち焦がれるも良し、中庭や家宝見物も良し。
いろんな楽しみ方のできる「文泉堂」へ是非、立ち寄ってみてください。
長浜文泉堂
住所:〒526-0054 長浜市大宮町5−14
電話:0749−62−0048
執筆 : 佐野元昭