• 2019.1.5
  • 菅浦

おもしろおかしく楽しむ!-菅浦の盆踊り-


「踊り場んばで踊らぬ者は、場んば狭いほに早よ帰れ」

「そりゃ、みっつとせー、しゃーんとせ」

夏の夜に聞こえてくる太鼓の音と唄。

昔を懐かしむ人、新たに知る子らが楽しむ菅浦の盆踊りを取材してきました。

子どもの頃、楽しかった菅浦の盆踊り

「菅浦の盆踊りは夏の風物詩として、菅の子らに親しまれていました」。

菅浦の人たちは自分たちの集落のことを「菅(スガ)」と呼び、盆踊りの唄の中でも登場する言葉です。

 

そんな盆踊りは今から約30年前に一度、終止符を打たれました。

しかし2017年の8月15日に復活を遂げました。

その開催の背景には30年前、小学生だった有志の皆さんの存在がありました。

「子ども時に、盆踊りに行って楽しかった記憶があるんですよ」

「大人も子どもも集まって、踊ったり遊んだり、ワイワイしたりした覚えが」

そんな有志の皆さんが

「小さい頃の印象に残る、賑やかでみんなが笑って楽しそうにしていた盆踊りをもう一度!」

ということで開催に踏みきったそうです。

 

「でも、小学生の頃のことで唄や踊りの記憶はあやふやで」

そこで唄い方や踊り方、当時の盆踊りを知る人を探して協力のお願いにまわり、唄の歌詞も個人が書き留めておられたものを頼りに、稽古をしていただいたとのこと。

子どもも大人も一緒に踊る!     

そして盆踊り当日、昼間の天気から一変して、なんと激しい雨。

中止になるかと思いきや、有志の皆さんが櫓にのぼり、盆踊りがスタートしました!

雨に打たれながらも、1人、また1人と盆踊りに参加していきます。

 

1時間ほどすると雨も止み、徐々に人も多くなり、子どもたちの姿も見えてきます。

おばあちゃんは踊りを教え、子どもは遊ぶように踊ります。

 

「盆踊りを開催することで、盆踊りを知らない世代が盆踊りを知る世代に習い、見よう見まねで体験し、菅浦の盆踊りを知る機会をつくりたい」

有志の皆さんがおっしゃっていた光景がそこに広がっていました。

出会いの場でもあった盆踊り

2時間以上にわたって行われた今年の盆踊りもおしまい。

櫓の上の太鼓と唄が締めようとすると、名残惜しく踊り手の皆さんが唄うことをやめません。

 

ようやく唄が終わったかと思うと、今度は集まった方々から拍手とアンコールの声がかかります。

中には櫓に向かって「ありがとう!!」という声をかける姿も。

盆踊りが終わってもその場を離れず、昔を懐かしみ、盆踊りを知る世代の方々同士、和気藹々と話す姿が見られました。

 

仕事の手を休め、ご先祖を迎えるお盆。

昔は菅浦でもまた、年に一度、村人が大勢集まる一大イベントだったとのこと。

出会いや交流の場でもあり、逸る気持ちや賑わいに高まる躍動を胸に盆踊りに出かけたそうです。

そんなことを思い出しながら、この櫓をじっと見つめているのでしょう。

無理のない持続のために

「盆踊りは関わる人が純粋にやりたいと思うことを大切にし、自分たちができる範囲で開催することにしました。

また、時には開催しないという選択肢も持って、無理のない継続を目指しています。

復活より「開催」という言い方のほうが合っているかもしれません。

いずれにしても盆踊りに取り組む経緯には、自分たちが子どもの頃、村のことに携わり継続してこられた世代の方々が、楽しかった思い出を残してくださったからこそです。

そのことを大切にしたいと思います」。

 

「伝統を守る」というよりも、「楽しい時間をつくる」ため盆踊りを運営しているとのこと。

有志メンバーもその都度、メンバーを募って運営する形態をとるという柔軟な体制です。

「菅の子ら」で盆踊りをおもしろおかしく楽しむ!

盆踊りについてご案内してくださった有志の一員である長澤さんに、そんな菅浦の盆踊りのこれからについてお伺いしました。

 

「菅浦の盆踊りが目指すことは、身内が集まるお盆に、みんなが楽しめそうな盆踊りを通じて、子どもや年輩の方を中心におもしろおかしく元気が出るような賑やかな時間を過ごすこと。

無くなるにはそれなりの理由もあったわけで、ご協力くださる故郷の方に感謝して、まだお越しになっていない菅浦の方が足を運んでくださることも思いながら、気負い過ぎず、楽しむ気持ちを忘れないよう。そんなふうに持続させたいです」。

「まつりの持続」には強制的な要素はなく、「純粋に盆踊りを楽しみたい!」という等身大の楽しさを大切にする長澤さんの気持ちが伝わってきました。

 

對馬佳菜子
この記事を書いた人
對馬佳菜子
長浜の仏像とどこか懐かしい村の景観、空気感に惚れ込んで、東京から滋賀県長浜市に移住。 神仏が日常生活に溶け混んでいて、祈る人、まつりが何百年と変わらず続いている長浜独自の観音文化を伝えていこうと模索中。 かけがえのない長浜の「日常」を伝えていきたいです。