鮒ずしの世界へようこそ

滋賀県でもっとも知られた郷土料理であり、日本を代表する発酵食――。今回の特集は鮒ずしです。

ごくごく簡単に言ってしまえば、琵琶湖の鮒を米と塩で漬け、発酵させたもの。この発展形が現在の握り寿司です。
チーズにも似た独特のにおいと風味があり、好きな人と嫌いな人が極端に分かれる理由はまずここにあると思われます。 とはいっても、鮒ずしの味は漬ける家庭ごと、店ごとにあります。
臭みを抑えあっさりと食べやすいもの。独特の香りがあってこそといわんばかりのもの。漬け方や漬ける期間など様々な要素で、出来上がりの様子は大きく変わってくるのです。

鮒ずしを苦手だと思い込んでいるのなら、改めて違う人や違う店で漬けた鮒ずしを食べてみてほしいのです。「あれ? 食べやすい、おいしいじゃない!」とびっくりすることもままあります。

伝統食・郷土食離れは確実に鮒ずしにも押し寄せています。自ら作るより買うもの、そして食べたことすらないという若い世代もいます。
その一方で好きが高じて、愛好家同志で食べ比べをする人や鮒ずしの活用の可能性を考えている人がいます。伝統食を受け継いでいこうという人たちもいます。
特集では、鮒ずしを愛する湖北の人たちを紹介します。漬ける際の独自の工夫や、食べ方や楽しみ方…めくるめく鮒ずしの世界が広がります。