• 2017.10.3 長浜の人
  • 市民カメライター養成講座

『普通』なのにすごい人。


清水政伸さん(多目的ハウス『川崎や』企画・運営・管理)

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とても不思議な人だと思う。
自分の住む町をもっと元気にしようとさまざまに行動し、自分の時間や時には私財も 提供して頑張っているのに、この人はいつもいたって普通だ。
『頑張っている』とか『町おこしに尽力している』という気負いみたいなものが全く見えない。とにかくいつもものすごく普通なのだ。
会えばニコニコと控えめで穏やかな笑顔を返してくれる「まあぼうさん」こと清水政伸さん(61)は長浜で99年の歴史を持つ老舗『清水眼鏡店』の3代目のご主人。

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眼鏡も補聴器もあつかう清水眼鏡店は、その確かな技術と清水さんの親切丁寧な対応 で、地元はもとより長浜市外にもたくさんの顧客を持つ。
だから清水さんはいつも忙しい。実際取材にうかがった日も入れ替わり立ち替わりお客様がお見えになって、対応に追われていらっしゃった。

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本業だけで充分忙しいにもかかわらず、清水さんは町づくりにも積極的に取り組む。
その活動の中でも最も力を注いでいるのが、清水眼鏡店も軒を並べる、やわた夢生小路商店街の一角にある多目的ハウス『川崎や』の企画・運営・管理。

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最近でこそ古民家再生や、多目的コミュニティスペースなどという言葉もよく聞くようになってきたが、『川崎や』が活動を始めたのは、今をさかのぼること15年前。まだまだ古民家の活用などが話題になるずいぶん前である。

 

『川崎や』はもともと商店街の中で営業されていた『川崎屋』といううどん屋さん。
店をやっていた方が亡くなられ、閉められてから長い間空き家で荒れ放題になっていた。
店舗は一度は解体の危機もあったが、商店街の理事長が「ここを歯抜けにしてしまってはだめだ!」との思いで店舗の持ち主を説得され、なんとか解体は免れて空き家のまま商店街にあった。

 

その頃、青年会議所に加盟していろいろなまちづくりを見たり、今はすっかり長浜のアートイベントとして定着した『アート イン ナガハマ』に関わったりしていた清水さん。やわた夢生小路商店街のまちづくりにも携わることになり、まちづくりの核になる建物がないか探していたところ目に留まったのが空き家のままになっていた『川崎屋』。さまざまな不思議ともいえる縁にも助けられ、それまで店舗を他人に貸すことを拒んできた店舗の持ち主から、「まちの役に立つなら・・・」と、なんとか川崎屋を商店街で借り受けられることになった。

 

 

借り受けはしたものの荒れ放題だった店に手を入れるのは大変だった。リフォーム費用の工面に奔走し、それでも足らない分は商店街の理事総出で大工さんの手伝いをして少しでも経費削減をするといった苦労も経て、ようやく平成14年11月にオープンにこぎつけたのが現在の多目的ハウス『川崎や』だ。

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オープンしてからも今度は運用に苦労した。当初はとにかく何か利用してくれる人はいないかと、つてを頼りに探しまくった。今のように安定して運用されるようになったのはここ数年ですよと話される清水さん。その川崎やも近年では年間で多い年は60回を 越えて活用されるほどになった。毎週末ごとに何かイベントが開催されている計算だ。

 

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安定して活用されるということは、同時に運営のスタッフとして入る清水さんも忙しくなるということで、本業も多忙な中、週末のイベントの準備から本番の音響・照明といったスタッフをこなす清水さんは、清水眼鏡店の閉店後、一息つくまもなく川崎やに駆けつける。

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当日の運営以外にも、川崎やで行われるイベントのポスターやフライヤー、チケットもすべて清水さんが作成。それも自分で大型プリンターを購入して作成だというから驚きだ。

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もうひとつ『川崎や』での名物、イベントのフリードリンクで提供されるコーヒーも清水さんのお手製。豆のブレンドも焙煎もご自身でされているのには、驚愕。

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出来ることの出し惜しみをしない人

仕事と川崎やの企画・運営・管理だけでも充分忙しいといというのに、清水さんはさらにこの他にもさまざまなまちのイベントに関わる。

 

商店街のまちづくりの一環で関わる、長浜八幡宮から旧国道八号線までの通りを使って開催されることから『88(ハチハチ)』を冠に名前につけた「88アサカツ」「88骨董市」「88ライブ」といったイベントもそのひとつ。

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毎週日曜に早朝から開催される「88アサカツ」に朝一番から音響設備をセットしに行き、

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「88ライブ」では音響さん。

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時には出演も。

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長浜八幡宮で毎年開催の盆踊りでは夜なべで大量のお楽しみ券や、飛行機くじを作り、

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お祭り本番ではこれまたお手製の飛行機くじ機で祭りを盛り上げる。

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この他にも商店街が共催している米川で蛍を愛でる会の事業では蛍の世話をし、季節になればほたる観賞会を開催、長浜の埋もれた歴史の紐を解く長浜市史を読む会では発起人の一人でもあり、月に一度の会の記録も毎回残している。どちらも10年以上続く活動だ。

 

商店街のまちづくり活動とは関係はなくても、頼まれれば大型プリンターで看板やパネル、ポスターを作ったり、持っている音響設備を貸し出したり。
とにかく頼まれれば自分の出来ることの出し惜しみを一切しない人なのである。

 

「普通」のひみつ

昼間は眼鏡店の仕事を忙しくこなし、仕事以外の時間はまちづくりにかかわること、人の役に立つことにこんなに奔走しているというのに、清水さんからはなぜか「人の役に立ちたい」といった「気負い」みたいなものを感じない。
また、いろいろな功績もありながら恩着せがましさなど微塵も感じない。清水さんはいつも本当に「普通」だ。

 

この「普通」さはなぜなんだろうとずっと考えていた。
今回お話をうかがったのもそこが知りたかったから。そうしてお話を聞いていくと、清水さんの口から「自分自身楽しんで、好きでやってますから」という言葉が出てきた。「しなくちゃいけない」「俺がやってやるんだ」ではなく「やりたい」「好き」だからやっているのだと。
「音楽や音響も昔から好きだった。物を作ることも昔から好きだった。昔から好きでやっていたことを今もやっているだけ。もちろんそれが人の役に立てば、もっとうれしいですよね」と。
その言葉で、清水さんの「普通」のひみつが少しわかった気がした。
でも「好きだから」だけが清水さんの「普通」のひみつなのか?とさらに聞くと、告白のようにぽつりぽつり話しだされた。
「僕は、自信家でないんです。いつも大丈夫かな?これでいいのかな?と思いながらやっている。自信満々にやってないんですよね。いつも自信がない。で、その根底には学業コンプレックスがあって、でも負けず嫌いなところもある。あいつに任せてもやっぱりだめだった、頼んでも出来ない、と思われるのが悔しくて。だから頼まれたこと以上のことをいつも返したいと思ってるんですよね」と。
どこかで頼まれた仕事に「文句を言わさないぞ」と思っているというのだ。

 

お話をうかがって、ずっと不思議だった清水さんの「普通」なすごさの秘密がわかった気がした。清水さんは実は「自信はないけど負けず嫌い」

 

そんな清水さんはこれからも変わらず「普通」に長浜のまちを盛り上げていってくれるのだろう。これからもずっと。

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多目的ハウス「川崎や」
滋賀県長浜市大宮町8-8
http://kawasakiya.web.fc2.com/
問い合わせ 0749-62-4543 清水メガネ店

 

藤田陽子
この記事を書いた人
藤田陽子
出身 大阪府 結婚して長浜市に住むこととなる。長浜に来るまで滋賀県にこんなに雪が積もるとはおもっておらず、そのことだけはいまだに騙されたと思っている。 初夏には家の周りでほたるが飛び、洗濯物にクワガタがとまり、川でさわがにとりができる長浜の環境を、子育てには最高と思いながらも熊の出没情報にはおびえる。まだまだ湖北在住修行中である。